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    新訳シャーロック・ホームズ全集 解説と感想レビュー

    新訳シャーロック・ホームズ全集 解説と感想レビュー

    英ドラマ「SHERLOCK」を観てから思い立った原作読書。
    全集を全て読むなんて初めての事でした。
    そんなシャーロック・ホームズ初心者による入門者のための簡単な解説と感想・レビュー。

    全集

    ★新訳全集発売順 日暮雅通訳 光文社文庫
    シャーロック・ホームズの冒険
    シャーロック・ホームズの回想
    緋色の研究 *緋色(ひいろ)=深紅色・スカーレット
    シャーロック・ホームズの生還
    四つの署名
    シャーロック・ホームズ最後の挨拶
    バスカヴィル家の犬
    シャーロック・ホームズの事件簿
    恐怖の谷


    ★原作発表順と解説・感想
    (「最後の挨拶」と「恐怖の谷」以外は単行本発行順)
    *タイトル横の年は単行本発行年。()内は雑誌ストランド掲載年。


    緋色の研究・四つの署名
    ●緋色の研究 長編 英1887年・米1890年(初出1887)
    ●四つの署名 長編 英1890年・米1891年(初出1890)


    「緋色の研究」
    ホームズとワトスンの出会いが描かれており、名コンビの原型を知るにあたって貴重な作品。
    2部構成で、1部が事件解決まで、2部は犯人が告白する過去のお話。
    ミステリーというより物語に近い。1部の展開はややスピーディーさに欠けるが、2部は冒険物語として面白く、一気に読める。
    ただ発表当時の反響はほとんどなかったみたい。

    「四つの署名」
    その後に続くホームズ・ワトソンコンビの原型が仕上がってきた感じがする作品。
    前作「緋色の研究」と同じく、後半の犯人が語る冒険物語風のストーリー展開は面白い。



    シャーロック・ホームズの冒険・回想
    ●シャーロック・ホームズの冒険 短編12集 英・米1892年(1891~1892)
    ●シャーロック・ホームズの回想 短編12集 英1893年・米1894年(1892~1893)


    長編2作品を発表後の1891年。短編が月刊誌「ストランド」に連載され始めてからホームズ作品は大人気になった。
    その短編をまとめた物がこの2作品。

    「冒険」
    当初、ドイルは「冒険」12作品の最後でホームズを殺すつもりだったが、母親からの猛反対で撤回。
    どちらにしろ他の小説を書くことに専念したかったドイルは、ホームズ続編に乗り気ではなかった。

    「回想」
    ドイルは、月刊誌「ストランド」からの続編執筆要請に「新シリーズ全体で1000ポンドの原稿料(「冒険」の原稿料の約2倍)を出すなら書く」と返答。この金額なら出版社もあきらめるだろうと思ったようです。
    しかし「ストランド」の発行人はその条件をあっさり受諾。やむなくドイルは新シリーズを苦労して生み出すことになりました。
    でも、結局「回想」収録の「最後の事件」で、ドイルは宿敵モリアーティ教授を登場させホームズを葬ることになります。

    『冒険』から『回想』に移る過程でホームズとワトソンの世界も確立されていく。
    ファンの支持も高いこの2作品は勢いがあって特に面白い。



    バスカヴィル家の犬
    ●バスカヴィル家の犬 長編 英・米1902年(1901~1902)

    ドイルは本来書きたかった歴史小説に割く時間がなくなってしまうという懸念から、何度もホームズ物を終わらせようとしていた。
    だが「最後の事件」でホームズ作品が終了すると、掲載雑誌「ストランド」の販売部数が30万部~40万部から2万部まで激減。
    ドイルは、読者や出版社の声に押されたのでしょう。「最後の事件」以前の時代設定ですが、この長編作品を執筆し、結果、雑誌も単行本も大ヒットを記録しました。

    古典ホラー小説としても評価が高い今作。長編の中では一番面白いです。映画やドラマにも向いてるようでいくつもの作品が作られたのも納得できる内容です。
    私が初めてホームズ作品に触れたのも今作。これ読んでホームズ作品を全部読んでみたいという気になりました。



    シャーロック・ホームズの生還
    ●シャーロック・ホームズの生還 短編13集 英・米1905年(1903~1904)

    「回想」収録の「最後の事件」より10年が経った1903年に「空き家の冒険」でホームズ生還。
    1901年から1903にかけて連載された長編「バスカヴィル家の犬」は「最後の事件」より前の設定だったため、この本当のホームズ復活劇に当時の読者はもちろん熱狂。
    これは、アメリカの出版社「コリアーズ」による1作につき4000ドル(一説には5000ドルとも9000ドルとも)の原稿料でとりあえず6編か8編を執筆、との条件をドイルがのんだために実現しました。
    ただ、今作ではホームズの分析的推理の面白さが影をひそめ、劇的な要素が中心になってきたことにより、「不注意な人物になった」「ぞんざいな方法をとるようになった」という批判も出ました。

    確かに読んでみると、ホームズの魅力である神がかり的な分析能力よりも、優れた推察能力という点が前面に出てます。
    ホームズがただの優秀な探偵っぽい印象になり、神秘的な魅力が欠けたようにも感じました。



    シャーロック・ホームズ最後の挨拶
    ●シャーロック・ホームズ最後の挨拶 短編7集
     英・米1917年(1908~1913・1917)


    いままでは月一作ペースでの短編発表だったのが、今作では、1作目「ウィステリア荘」から6作目「瀕死の探偵」までで5年、7作目の「最後の挨拶」まで含めると丸9年かかって発表されている。
    これはドイルの私生活が、国会に2回目の出馬をして落選、妻の病死、再婚、などと多忙だったということもあげられるようです。
    ちなみに、6作目から7作目の間には長編「恐怖の谷」が執筆され1915年に発刊されています。そして最後に収録されている「最後の挨拶」はホームズの探偵引退後の物語です。

    「生還」でやや落ち着いた感が出てきたホームズ作品でしたが、今作は地味に秀作揃いという感想も持ちました。
    特に「ブルース・パーティントン型設計書」などは、サスペンスとして今でも通じるような洗練さを感じました。

    印象に残ったホームズのセリフは「ぼくはゲームを楽しむためにゲームをするんだよ、、」(ブルース・パーティントン型設計書、P84)というもの。
    別に目新しい言い回しでもないんですが、ホームズが言うと重みが違うわけです。
    何かをする時に、これは別な何かの役に立つのか、もしくは、役に立つんではないかと考えながら行動する。ということは誰しもあることです。
    良いことではあるんだけど、不純であるとも言えます。純粋に物事それ自体を楽しむことが出来ない、下手な理由付けをしなくては楽しむことが出来なくなっている、とも言えます。ただ楽しむということの貴重さに気付かされた気がしました。



    恐怖の谷
    ●恐怖の谷 長編 英・米1915年(1914~1915)

    最後の長編作品。
    「緋色の研究」や「四つの署名」と同じように、1部はホームズの謎解き、2部は犯人のルーツを探る告白文、という2部構成。
    2部の物語は、モリー・マグワイアーズとピンカートン探偵社の実在の事件を下敷きにしている。

    2部のストーリーにホームズは一切出てこないんですけど、これがハードボイルド的小説で面白いんです。
    シリーズを読んでいくにあたって、正直、ドイルはホームズとワトソンの名コンビの上に多大な恩恵を受け乗っかっている、そんな側面も多少は感じてました。
    でも今作を読むと、こんな物語が書ける下地があるからこそあんな名コンビを生み出すことが出来たのだなということが、当たり前の事ですが改めて実感できました。



    シャーロック・ホームズの事件簿
    ●シャーロック・ホームズの事件簿 短編12集 英・米1927年(1921~1927)

    1917年の「最後の挨拶」で今度こそホームズ物語を終わりにしたつもりのドイルであったが、1920年にストール社が始めたホームズ・シリーズの映画に感激。特にホームズ役の俳優エイル・ノーウッドの物静かな演技と変装の妙技に惚れ込みます。
    そんな環境にドイルは刺激され、ホームズ劇の脚本を執筆、またもやホームズ物を書き始めます。
    1年に1、2作のペースで、1930年に亡くなる3年前まで書き続けました。その短編を集めた最後の単行本。

    ホームズ隠退後の物語としては「最後の挨拶」がありますが、今作にも「ライオンのたてがみ」という隠退後の話が収録されています。
    語り手がワトソンではない作品も登場します。三人称の「マザリンの宝石」。ホームズが一人称で語る「白面の兵士」と「ライオンのたてがみ」。12編中3作品ですが、残念ながら作品の魅力が半減しており、ワトソンの存在感を再認識させられます。

    最後の作品になる今作、ホームズが謎という巨大な渦に入り込み収拾していくさまというより、さまざまな人生が織りなす物語で歯車のかけ違いをホームズが少し叩いて直すといった印象です。

    ホームズ引退後の後日談「最後の挨拶」は締めくくりの物語としてはまずまずの出来でした。
    そこで終わってもよかったと思うのですが、またもや復活した今作は、ファンには最後のプレゼント、ビッグなおまけ、として考えれば感慨深いです。



    ★全集読後の感想

    全編通してみると、モリアーティ教授って実はほとんど出てこないんですよね。
    ドラマなどでは必ずと言っていいくらいメインに出てくるんで、原作でもそうなのかなって思ってたんですけど。
    ホームズを出し抜く女性、アイリーン・アドラー(ボヘミア王家の醜聞)もしかり。
    後の製作者の創造をかきたてるキャラやシチュエーション。それらの細かな要素が随所にちりばめられているのもホームズ作品の魅力なのでしょう。

    では最後に、個人的にホームズ作品での最高傑作というか、おすすめはどれか。
    短編では「シャーロック・ホームズの冒険」「シャーロック・ホームズの回想」
    長編では「バスカヴィル家の犬」
    この3作品です。

    そして全集発売順は、よく考えられた順番だなと思います。
    「恐怖の谷」で全集完結というのは、後の映画やドラマへの橋渡しのような余韻を感じさせてくれました。
    日暮雅通氏によるこだわりと根気が詰まった新訳も良かったと思います。



    <参考>
    各巻の解説

    <年代確認最終参考>
    「恐怖の谷」解説


    <追記>
    コナンドイル
    NHKでホームズ特集やってました(2013/11/02)。
    地球ドラマチック「名探偵シャ―ロックは今も生きている!?」カナダ制作。
    でもってコナンドイル本人の貴重なインタビュー映像も所々にありました。
    ドイルってこんな顔だったのね。


    <関連記事>
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    シャーロックホームズ 原作の理解度を深めるために






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